コウとヨシは時々いっしょに遊びました。土地の境界の木に登ったり、竹林、水のない田んぼの用水路、山積みになった稲わらの陰等、そこは二人のもう一つの部屋であり隠れ家になりました。

 コウは、鳥の巣のような木の枝に体を預けて、いろんなことを考えました。

でも、それは「考え」というより、流れる雲のようなフワフワしたイメージでした。

なぜなら、コウは、毎日を遊びのように感じていました。

えることなく、おなかがすくとご飯を食べて、何となく学校に行って、家の手伝いは言われたことしかしませんでしたし、ダダは仕事で忙しいので怒ったことがないし、将来のことなど話したことはありませんでした。

躾けらしい事もあまりありませんでした。
時々、家の手伝いをしないことに怒ったタミに頭をバシバシ
たたかれましたが、コウは訳がわからず、ただ泣いていました。

 なので、コウは鳥の巣のような隠れ家で、大人の世界を見下ろしたり、ただボーッと雲を見ているような子どもでした。

そして、時々、何年も前に死んだ妹のことをふっと思い出しました。

箱に入れられ、土に埋められた妹の心はどこに行ってしまったのだろうと。