夏、船が沖に出て網を流して漁をするとシードおじい
ちゃんの家で煮干しを作る時がありました。
 おじいちゃんは地引き網に使う大きな網を持っていま

した。
船は、他の家の人が出しました。休日に船を出して、
網をかけると原付に乗ったよそのおじさんが、「網カケ
タゾー、網カケタゾー」と言って、自分の町内は
もちろんのこと隣の町内も、そのまた隣の町内まで
声をかけて走り回りました。
その声を聞くと、大人の男も女の人も、子供たちまで
連れて、家族みんなで浜に出掛けました。
そして、大人の男の人や女の人や体の大きな中学生まで
もが、漁師の人が準備した「引きひも」を借りて、
網の元綱に引っかけて、みんなで網を引っ張りました。
その光景はまるで、小さなお祭りのようでした。
  そして、大きな波が押し寄せる暗い海の底から、

不思議なことに、あの「大きなかぶ」のようにたくさんの

魚が入った網がゆっくりと現れるのです。

 完全に魚が逃げない砂浜の位置まで網を引き揚げると、
大きな魚は木の箱に入れて、漁を手伝った人たちで
平等に分けました。
網の中には、いろんなものが入っていました。カニや
うなぎのような細長い魚などなど。