その小さなお祭りのような地引き網漁に、コウもタミに連れられて行ったことがありました。
タミが網を引いている時、コウはタミの回りにハエのようにまとわりついていました。
しかし、タミが魚の分配を手伝っている時は邪魔だったので、コウに小さな蟹をくれました。
コウは、大きな波のこない砂浜でその蟹と遊んでいました。すると、小学生の男の子がきてその蟹を持って行ってしまいました。コウは、唖然として見送っていました。
あの小さな蟹はどうなってしまったのでしょうか。

 





 小さな魚は、たくさんの木の箱に入れ、おじいちゃんの家に運びました。 
  シードおじいちゃんの家では、親戚の男の人や女の人が
お風呂に使う大きな釜で小魚を茹でて、竹で作った、小さな畳ほどもあるセイロに干すのです。乾燥すると煮干として売りました。
セイロは、竹職人だったダダが作りました。
コウや多くのいとこ達は、茹でたての小魚をつまみ食いして
空腹を満たしました。でも、そんな事をしても、誰も怒られませんでした。



 

  コウの家では、夕食のとき塩をふった鰯を食卓の横で七輪で焼いて、焼き立てを食べていました。油がジュージューと音を立てている熱々の鰯を白いご飯と一緒に食べるのが、コウとヨシは大好きでした。
ダダとタミは、燕のように口を動かす二人にせっせと焼けた鰯を渡すので、自分たちはご飯を食べる暇がありませんでした。
でも、ダダとタミはニコニコ笑いながらそんな二人を見ていました。幸せな四人の食卓でした。