その日、コウは朝から少し体の調子が良くないなと感じましたが、そのまま、仕事に出掛けました。お天気は、まあまあで、少し日が差して明るい朝だったからです。 



 会社に着くと、いつもの様に大型トラックに乗って仕事を始めました。でも、高速道路に上がって少し運転していると、どんどん頭痛と吐き気がしてきました。
コウは、ハザードランプをつけ路肩に車を止めました。少し休んでいるうちに急に天気が悪くなって外は真っ暗になりました。

 



  

 コウは、実家の近くの川辺に似た所にいました。
ふと、隣を見るとタミもいました。タミは、髪の長い小さな子どもを抱っこしていました。
「母さん、どうしたの?」
「迎えにきたんだよ。」







コウは、少し考えていました。
「母さん、その子は僕の妹?僕は、死んでしまったの?」
「そうだよ」
と返事をしたタミの腕の中で、小さな妹は微笑んでいました。
「仕事のトラックはどうなったんだろう。」
「大丈夫、近くを通った運転手の人が連絡してくれたよ。お前も、救急車で運ばれたけど助からなかったのさ。」
「そうか、大きな事故にならなくて良かったよ。」  

 
コウは、また少し考えていました。
「母さん。母さんが寝たきりで入院していたとき、チューブで食事を流し込んでいたろ。あれって、味気なくて苦しくて、人生つまらないよね。僕も、胆石で入院して点滴だけの時、やっと気がついたんだ。」
「そうかい。」
タミも、やさしく微笑みました。   

  
「そろそろ、みんなの所にいこうか。」
「ああ」とコウは言い、
「母さん、そこはクローバーが生えているだろうか。」
と聞きました。
「それがお前の望みなら、お前の心の真ん中から辺り一面にクローバーが広がるよ。」
コウは、顔も覚えていないキチおじいちゃんに会えると思い、嬉しい気持ちが沸き上がってきました。