ろうそくと線香に火を付けながら、長男のレイがヨシに

尋ねました。
「ねえ、お父さん。コウおじさんて子供のときはどんな

子供だったの?」
ヨシは、墓地から見える海の方を見ながらゆっくりと
答えました。
「泣いてばかりいる子供だったよ。赤ちゃんのときは
おばあちゃんを探して泣いてばかりいたそうだし、

おじいちゃんと三人で薪拾いに行ったときは、波にさらわれた

お父さんが泣いたけど、帰り道二人で手をつないで帰った

ときは、コウだけがずっと泣いていたそうだ。
それから、シードおじいちゃんの家のお風呂場でお父さんの

足に釘が刺さったときも、コウのほうがずっと泣いていたらしい。
いつも、ほかの人のために泣いていたのかな。」

 
 車椅子のダダは、静かにタミとコウと生まれてすぐに
亡くなった娘の墓を見続けていました。

 
末っ子のユカが言いました。
「でも、おじちゃんは心がきれいな人だった。大人になっても

純粋なまま生きてこられて、幸せだったんじゃないかな。」
「そうだな。アパートに残された、たくさんの絵を見れば

分かるよな。あの絵を家に飾ろう。クローバーの里の

小さな家に。」

とヨシが言いました。家族たちは、小さくうなずきました。