コウは、仕事で高い山の中腹に上り、日が落ちた麓の盆地

見下ろしていました。
帳の落ちた街の灯は、コウの胸を締めつけ、人恋しくさせました。
コウは、その灯の一つ一つに人の営みと喜怒哀楽を感じました。




 


   なぜ自分はここに一人立ってそれを見つめているのか
と問いかけました。
   この仕事をやめれば、あの灯の中に明日からでも
飛び込んでいけるのに。
でも、その後どうするのだ。働かなければ、絵を描くため

画材は買えないし、時間も得られないというのに。
自分には、絵を描くという長い長い夢があるというのに。


   そしてコウは、この自然の美しさと人の生活の思いを
絵にしなければと強く思ったのでした。