コウの家では夜の9時までしかテレビを見ませんでした。父親のダダは朝早く仕事に行くので、9時には床につくようにしていましたから、子供達も9時までしかテレビを見せてもらえませんでした。そして、7時からはダダのニュースを見る時間でした。ですから、「忍者 赤影」や「ウルトラシリーズ」はなかなか見られませんでした。でも、「巨人の星」や「8時だよ!全員集合」は家族みんなで見ました。









 いつもの就寝時間が近づいた頃、コウは、今日も学校で先生に叱られたことを思い出しました。

「ねえダダ?学校の先生も友達も他人の悪口を言う人ばかりだよ。人の良いところを見つけて褒める大人は居ないのかな?」

「居るよ。テンノウと言う人は良いことした人や、頑張った人に勲章をくれるんだよ」

「テンノウ?漫画の日本の歴史に出てた人かな?」

「日本で一番偉い人だよ」

「その人が神様のような人だったら、僕らの国や地球は、競争しなくも済むすばらしい世界になるよね」

  

ダダは、少し考えてから言いました。

「コウ。昔、ダダが子供の時に大きな戦争が有った。テンノウでもその戦争を止めることは出来なかったんだよ」

コウは、テレビで今でも世界のどこかで戦争が続いていることを知っていました。

「でも、日本の偉い人達や世界中の偉い人達は勉強して頭が良いんでしょう。なぜ戦争をはじめてしまうの?戦争を起こさない方法を勉強しなかったの?」