楽しいことも、少しは有りました。南の海の波が

キラキラと光って、風が北国と違う音を運んで来るのでした。
   欲しかったものを自分の給料で買い、そして、貯金も
始めました。


   数ヶ月過ぎて、休みをもらい実家に帰ったとき、コウは、

「親戚からもらった就職の餞別を頂戴」
タミに、言いました。

親戚のおじさん、おばさん達から餞別ののし袋を受け

取ったことを、コウは覚えていました。タミは、
「自分たちの暮らしに使った」
と言いました。それを聞いたときコウは、少し腹が
立ちました。が、少し頭を冷やして冷静になると、怒った
自分が恥ずかしくなりました。
 というのも、弟のヨシは、まだ、高校生でした。
いったい自分が就職するまで、ダダとタミが、どれだけ
頑張ってお金を稼いで暮らしを立ててきたのか、そして、
自分とヨシを育ててくれたのかが、就職してやっと分かっ

たのでした。