うたた寝(副題:幼く寂しい生き物) [ミニ童話]
目が覚めると、木の枝などで造られた鳥の巣のようなところ
に居ました。そこは、鳥人間の世界でした。出会った鳥人間
が言いました。
「おい、あの人間は翼が無いぞ」
そう言うと、みんなで高慢な人間の頭を嘴で突つきました。
頭を血だらけにされて高慢な人間は気を失いました。
次に目が覚めると、蒸し暑い蛇人間の世界に居ました。
蛇人間達は言いました。
「おい、あの人間は手と足があって美味しそうだな」
と言って、蛇人間達は高慢な人間を食べようと追いかけ
回しました。
「おい、あの生き物は天井を飛べないし、世界を耳で知るこ
とが出来ないようだぞ」
どうやら地底人は、翼と鉤爪を持っていて音の反響で空間を
見ているようでした。地底人達が・・・
また目が覚めると、そこは薄暗くて静かな所でした。遠く
で小さな光が瞬いていました。ああ、悪夢から目が覚めて
やっと自分の家に戻ってきたんだなと思いました。
でも、周りを良く見ると肌寒くて窓が全然ありませんでした。
しかも体がとっても軽くなっていました。ひとりぼっちで
段々寂しくなりました。
「寂しい人間」は建物の中に他の人間が居ないか探し回りま
したが、誰も居ません。やっと小さな窓を見つけて外を見る
と、大きな月が見えました。
でも、それはいつも見ていた月の姿とは違っていました。
それは、茶色になった地球のように見えました。
ここは、ロボットが住む宇宙コロニーでした。
「寂しい人間」はもうどのくらいここに居るのか分からなく
なりました。だって、スマホは無いし、カレンダーは無いし、
何よりもひとりぼっちでテレビも無いのですから。
「寂しい人間」が叫び声をあげようとしたとき、いきなり目
が覚め飛び起きました。
ソファーの上で冷や汗をかいている自分を見下ろしながら、
ふと、点けっぱなしだったテレビの方を見ました。
テーブルの下にいた飼い猫のルナが、「幼い人間」を見つめて
「ニャー」とつぶやきました。