第6章 就職そして逝去 エピソード7 父のまなざし [第6章 就職そして逝去[Work&Death]]
コウは、昇進したので、現場から事務所の仕事に配置
換えになりました。
社宅を出てアパートを借り、友達と遊んだり、恋をしたり
社宅を出てアパートを借り、友達と遊んだり、恋をしたり
しました。
出張も少なくなったので、アパートで絵を描く時間も増え
出張も少なくなったので、アパートで絵を描く時間も増え
ました。
実家にも時々はがきを出したり、お彼岸にはお菓子を
送ったりしました。
実家にも時々はがきを出したり、お彼岸にはお菓子を
送ったりしました。
夏のある日、仕事の休憩中にふと晴れた空を見上げた
とき、自分の視線の奥に自分以外のものを感じました。
それは、懐かしい感じがしました。
とき、自分の視線の奥に自分以外のものを感じました。
それは、懐かしい感じがしました。
どうしたことでしょう、コウの目の奥にダダの存在を感じ、
それは完全にコウに同化していました。
コウは小学校の上級生だった頃のある夏の日のことを
思い出しました。
それは、桶職人だったダダに、修理の依頼があり
久しぶりに竹で桶のタガを作っていた時のことでした。
その横で、コウは1メートル程のコンクリートの土管に
飛び上がる遊びをしていました。
何度も何度も土管の上に飛び乗り、時々ダダの方を見ると
ダダもこちらを見ており、時々、目が会いました。
いつも、無口な父親と気持ちが通じたように思えて
コウはなんだかうれしくなったのでした。
思い出しました。
それは、桶職人だったダダに、修理の依頼があり
久しぶりに竹で桶のタガを作っていた時のことでした。
その横で、コウは1メートル程のコンクリートの土管に
飛び上がる遊びをしていました。
何度も何度も土管の上に飛び乗り、時々ダダの方を見ると
ダダもこちらを見ており、時々、目が会いました。
いつも、無口な父親と気持ちが通じたように思えて
コウはなんだかうれしくなったのでした。
第6章 就職そして逝去 エピソード6 猫の絵描き [第6章 就職そして逝去[Work&Death]]
それらは、猫をモチーフにしたじょうずな絵でした。
ぶらぶらしながら絵を見ていると、椅子に座っていた絵描きが話しかけてきました。
「・・・僕の友達に、西岡恭蔵っていうやつがいてね。体を壊して死んじゃったんだよね。・・・・・」
などと言いながらプロフィールカードをくれました。
コウは、「西岡恭蔵?」「プカプカ」の?友達なの?と思いながら帰ろうとしました。
すると、最後に絵描きは、
「頑張ってください」とコウに言いました。
絵描きの名は、「高橋行雄」と言いました。
ぶらぶらしながら絵を見ていると、椅子に座っていた絵描きが話しかけてきました。
「・・・僕の友達に、西岡恭蔵っていうやつがいてね。体を壊して死んじゃったんだよね。・・・・・」
などと言いながらプロフィールカードをくれました。
コウは、「西岡恭蔵?」「プカプカ」の?友達なの?と思いながら帰ろうとしました。
すると、最後に絵描きは、
「頑張ってください」とコウに言いました。
絵描きの名は、「高橋行雄」と言いました。
第6章 就職そして逝去 エピソード5 夕闇の山裾で [第6章 就職そして逝去[Work&Death]]
見下ろしていました。
帳の落ちた街の灯は、コウの胸を締めつけ、人恋しくさせました。
コウは、その灯の一つ一つに人の営みと喜怒哀楽を感じました。
帳の落ちた街の灯は、コウの胸を締めつけ、人恋しくさせました。
コウは、その灯の一つ一つに人の営みと喜怒哀楽を感じました。
画材は買えないし、時間も得られないというのに。
自分には、絵を描くという長い長い夢があるというのに。
自分には、絵を描くという長い長い夢があるというのに。
そしてコウは、この自然の美しさと人の生活の思いを
絵にしなければと強く思ったのでした。
第6章 就職そして逝去 エピソード4 電 話 [第6章 就職そして逝去[Work&Death]]
コウが就職して数年が過ぎていました。就職して
最初の頃は、連休のときには実家に帰っていましたが、
最初の頃は、連休のときには実家に帰っていましたが、
弟のヨシも就職をして物が増え、狭い家の中に自分の
居場所が無くなると、時間とお金をかけて帰省するのが
煩わしくなりました。
それに、仕事は忙しくても楽しくて、友達と遊んだり、
本を読んだり、時には絵を描いたり、孤独でしたが
自由でした。
コウは家族のことを思いださなくなりました。
居場所が無くなると、時間とお金をかけて帰省するのが
煩わしくなりました。
それに、仕事は忙しくても楽しくて、友達と遊んだり、
本を読んだり、時には絵を描いたり、孤独でしたが
自由でした。
コウは家族のことを思いださなくなりました。
ある日、社員寮に電話がかかってきました。呼ばれた
コウが電話に出ると、女の人が怒鳴りました。
それは、タミからの電話でした。コウは、1年以上
実家に郵便も出さず、電話さえしていませんでした。
コウは、タミの怒った声を素直に聞いていました。
受話器を置くと、胸の真ん中に温かいものが灯って
いるのが感じられました。
コウが電話に出ると、女の人が怒鳴りました。
それは、タミからの電話でした。コウは、1年以上
実家に郵便も出さず、電話さえしていませんでした。
コウは、タミの怒った声を素直に聞いていました。
受話器を置くと、胸の真ん中に温かいものが灯って
いるのが感じられました。
第6章 就職そして逝去 エピソード3 転 勤 [第6章 就職そして逝去[Work&Death]]
コウ達新入社員は、研修が終わると全国の支店に配置
になりました。
コウは、お金をためようと一生懸命働きました。雑用も
になりました。
コウは、お金をためようと一生懸命働きました。雑用も
嫌がりませんでした。
長い出張も不平を言わず引き受けました。
もともと、まじめな性格だったので、仕事の要領とコツを
長い出張も不平を言わず引き受けました。
もともと、まじめな性格だったので、仕事の要領とコツを
どんどん吸収していきました。
少しずつ責任のある仕事を任され、給料も少しずつ
上がっていきました。
少しずつ責任のある仕事を任され、給料も少しずつ
上がっていきました。
少しして、コウは、ダダとタミに感謝を込めて時計を
2個送りました。
2個送りました。
第6章 就職そして逝去 エピソード2 就 職(その2) [第6章 就職そして逝去[Work&Death]]
楽しいことも、少しは有りました。南の海の波が
キラキラと光って、風が北国と違う音を運んで来るのでした。
欲しかったものを自分の給料で買い、そして、貯金も
始めました。
欲しかったものを自分の給料で買い、そして、貯金も
始めました。
数ヶ月過ぎて、休みをもらい実家に帰ったとき、コウは、
「親戚からもらった就職の餞別を頂戴」
とタミに、言いました。
とタミに、言いました。
親戚のおじさん、おばさん達から餞別ののし袋を受け
取ったことを、コウは覚えていました。タミは、
「自分たちの暮らしに使った」
と言いました。それを聞いたときコウは、少し腹が
立ちました。が、少し頭を冷やして冷静になると、怒った
自分が恥ずかしくなりました。
というのも、弟のヨシは、まだ、高校生でした。
いったい自分が就職するまで、ダダとタミが、どれだけ
頑張ってお金を稼いで暮らしを立ててきたのか、そして、
自分とヨシを育ててくれたのかが、就職してやっと分かっ
「自分たちの暮らしに使った」
と言いました。それを聞いたときコウは、少し腹が
立ちました。が、少し頭を冷やして冷静になると、怒った
自分が恥ずかしくなりました。
というのも、弟のヨシは、まだ、高校生でした。
いったい自分が就職するまで、ダダとタミが、どれだけ
頑張ってお金を稼いで暮らしを立ててきたのか、そして、
自分とヨシを育ててくれたのかが、就職してやっと分かっ
たのでした。
第6章 就職そして逝去 エピソード1 就 職(その1) [第6章 就職そして逝去[Work&Death]]
コウは、高校を卒業すると就職のため南の方の半島
に出発しました。
親に相談することもなく、自分で選んだ仕事でした。
駅で家族や親戚に送られ、電車が出発したとき涙が
親に相談することもなく、自分で選んだ仕事でした。
駅で家族や親戚に送られ、電車が出発したとき涙が
にじんできました。
温かい気候の半島に、大勢の若者が集められ苦しい
研修が始まりました。
今までののんびりとした暮らしとはまるで違う生活でした。
温かい気候の半島に、大勢の若者が集められ苦しい
研修が始まりました。
今までののんびりとした暮らしとはまるで違う生活でした。
コウは、まだ世の中のこともお金のことも理解しいない
子供でした。
お金を稼ぐということを初めて理解しました。そして、
二カ月ほどで、仕事をやめて家に帰りたくなりました。
けれども、地元での就職と給料の事を考えて、退職を
お金を稼ぐということを初めて理解しました。そして、
二カ月ほどで、仕事をやめて家に帰りたくなりました。
けれども、地元での就職と給料の事を考えて、退職を
思いとどまりました。