SSブログ
第6章 就職そして逝去[Work&Death] ブログトップ
- | 次の8件

第6章 就職そして逝去 エピソード7 父のまなざし [第6章 就職そして逝去[Work&Death]]

   コウは、昇進したので、現場から事務所の仕事に配置
換えになりました。
社宅を出てアパートを借り、友達と遊んだり、恋をしたり
しました。
出張も少なくなったので、アパートで絵を描く時間も増え
ました。
 実家にも時々はがきを出したり、お彼岸にはお菓子を
送ったりしました。
  
仕事と遊び.jpg
 夏のある日、仕事の休憩中にふと晴れた空を見上げた
とき、自分の視線の奥に自分以外のものを感じました。
それは、懐かしい感じがしました。

どうしたことでしょう、コウの目の奥にダダの存在を感じ、
それは完全にコウに同化していました。
 
   コウは小学校の上級生だった頃のある夏の日のことを
思い出しました。
それは、桶職人だったダダに、修理の依頼があり
久しぶりに竹で桶のタガを作っていた時のことでした。
その横で、コウは1メートル程のコンクリートの土管に
飛び上がる遊びをしていました。
何度も何度も土管の上に飛び乗り、時々ダダの方を見ると
ダダもこちらを見ており、時々、目が会いました。
いつも、無口な父親と気持ちが通じたように思えて
コウはなんだかうれしくなったのでした。
3280-2 (640x480).jpg

タグ: 思い出
nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

第6章 就職そして逝去 エピソード6 猫の絵描き [第6章 就職そして逝去[Work&Death]]

   ある日、コウはいつものように街へ画材を買いに行きました。
画材をぶら下げて、ふと2階のギャラリーに行くと、一人の
絵描きの展示会をしていました。

IMG_2713-2 (640x480).jpg
   それらは、猫をモチーフにしたじょうずな絵でした。
ぶらぶらしながら絵を見ていると、椅子に座っていた絵描きが話しかけてきました。
「・・・僕の友達に、西岡恭蔵っていうやつがいてね。体を壊して死んじゃったんだよね。・・・・・」
などと言いながらプロフィールカードをくれました。
コウは、「西岡恭蔵?」「プカプカ」の?友達なの?と思いながら帰ろうとしました。
すると、最後に絵描きは、
「頑張ってください」とコウに言いました。
絵描きの名は、「高橋行雄」と言いました。
     

nice!(4)  コメント(1) 
共通テーマ:日記・雑感

第6章 就職そして逝去 エピソード5 夕闇の山裾で [第6章 就職そして逝去[Work&Death]]

   コウは、仕事で高い山の中腹に上り、日が落ちた麓の盆地
見下ろしていました。
帳の落ちた街の灯は、コウの胸を締めつけ、人恋しくさせました。
コウは、その灯の一つ一つに人の営みと喜怒哀楽を感じました。
 
   なぜ自分はここに一人立ってそれを見つめているのか
と問いかけました。
   この仕事をやめれば、あの灯の中に明日からでも
飛び込んでいけるのに。
でも、その後どうするのだ。働かなければ、絵を描くため
画材は買えないし、時間も得られないというのに。
自分には、絵を描くという長い長い夢があるというのに。

   そしてコウは、この自然の美しさと人の生活の思いを
絵にしなければと強く思ったのでした。
 
IMG_9302 (640x480).jpg

タグ:夕暮れ 灯り
nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

第6章 就職そして逝去 エピソード4 電 話 [第6章 就職そして逝去[Work&Death]]

IMG_2706-2 (640x480).jpg
   コウが就職して数年が過ぎていました。就職して
最初の頃は、連休のときには実家に帰っていましたが、
弟のヨシも就職をして物が増え、狭い家の中に自分の
居場所が無くなると、時間とお金をかけて帰省するのが
煩わしくなりました。
それに、仕事は忙しくても楽しくて、友達と遊んだり、
本を読んだり、時には絵を描いたり、孤独でしたが
自由でした。
コウは家族のことを思いださなくなりました。
でんわ.jpg
  ある日、社員寮に電話がかかってきました。呼ばれた
コウが電話に出ると、女の人が怒鳴りました。
それは、タミからの電話でした。コウは、1年以上
実家に郵便も出さず、電話さえしていませんでした。
コウは、タミの怒った声を素直に聞いていました。
受話器を置くと、胸の真ん中に温かいものが灯って
いるのが感じられました。

タグ:電話 就職
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

第6章 就職そして逝去 エピソード3 転 勤 [第6章 就職そして逝去[Work&Death]]

IMG_3485 (480x640).jpg
  コウ達新入社員は、研修が終わると全国の支店に配置
になりました。
コウは、お金をためようと一生懸命働きました。雑用
嫌がりませんでした。
長い出張も不平を言わず引き受けました。
もともと、まじめな性格だったので、仕事の要領とコツを
どんどん吸収していきました。
少しずつ責任のある仕事を任され、給料も少しずつ
上がっていきました。
  少しして、コウは、ダダとタミに感謝を込めて時計を
2個送りました。
時計 (640x480).jpg

タグ:転勤 贈物
nice!(7)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

第6章 就職そして逝去 エピソード2 就 職(その2) [第6章 就職そして逝去[Work&Death]]

IMG_2838 (640x480).jpg
  楽しいことも、少しは有りました。南の海の波が
キラキラと光って、風が北国と違う音を運んで来るのでした。
   欲しかったものを自分の給料で買い、そして、貯金も
始めました。
   数ヶ月過ぎて、休みをもらい実家に帰ったとき、コウは、
「親戚からもらった就職の餞別を頂戴」
タミに、言いました。
親戚のおじさん、おばさん達から餞別ののし袋を受け
取ったことを、コウは覚えていました。タミは、
「自分たちの暮らしに使った」
と言いました。それを聞いたときコウは、少し腹が
立ちました。が、少し頭を冷やして冷静になると、怒った
自分が恥ずかしくなりました。
 というのも、弟のヨシは、まだ、高校生でした。
いったい自分が就職するまで、ダダとタミが、どれだけ
頑張ってお金を稼いで暮らしを立ててきたのか、そして、
自分とヨシを育ててくれたのかが、就職してやっと分かっ
たのでした。

IMG_9172 (640x480).jpg


タグ:就職 子育て
nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

第6章 就職そして逝去 エピソード1 就 職(その1) [第6章 就職そして逝去[Work&Death]]

IMG_3779-2 (480x640).jpg
   コウは、高校を卒業すると就職のため南の方の半島
出発しました。
 親に相談することもなく、自分で選んだ仕事でした。
駅で家族や親戚に送られ、電車が出発したとき涙が
にじんできました。
 
   温かい気候の半島に、大勢の若者が集められ苦しい
研修が始まりました。
今までののんびりとした暮らしとはまるで違う生活でした。

   コウは、まだ世の中のこともお金のことも理解しいな
子供でした。
お金を稼ぐということを初めて理解しました。そして、
二カ月ほどで、仕事をやめて家に帰りたくなりました。
けれども、地元での就職と給料の事を考えて、退職を
思いとどまりました。
IMG_2630-2 (640x480).jpg

タグ:就職 旅立ち
nice!(8)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感
- | 次の8件 第6章 就職そして逝去[Work&Death] ブログトップ